映画館

最近立て続けに映画がヒットした。「秒速5センチメートル」の新海誠監督の「君の名は。」と庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」だ。「君の名は。」のほうは噂が噂を呼んだのか公開二週目に入って映画館にどっと人が押し寄せたらしい。で、興行収入が38億円を突破したとか。一方、「シン・ゴジラ」のほうは公開から38日で興行収入が60億円を突破したらしい。もういろいろと記録を塗り替えていきそうな勢いであることは間違いない。

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新海監督の作品は秒速5センチメートルもそうだったけれど、とにかく映像美に目が釘付けになる。とにかく美しい。アニメが一生懸命に実写に近づけて実写に近いから美しいというわけではなく、アニメの独特の美しさで細部までこだわった作品作りが特徴だ。アニメ独特の表現の美しさというのは時に実写の美しさを超えてくる。なぜならばそれは脳内のイメージに直接訴えかけてくるような表現だからだと思う。

「シン・ゴジラ」のほうは、あのゴジラのリメイク版ともいえる作品なのだが、古のあの怖いゴジラが返ってきたと評判になっている。そして、また面白い現象なのだが、実際の今の東京が舞台なだけに、自分の家とか自分の会社が、とか身近にあるものが映画に登場し、ゴジラに踏みつぶされそうになったりするところにリアリティを感じて、それがまた恐怖感と結びつき、新鮮な感情を沸き起こしてくれているようで、それも一つの見どころであり魅力となっているようだ。

映画が大ヒットして劇場に多くの人が足を運ぶという現象は、映画界の人々にとってはうれしいことだろう。
映画もネットや美しい映像を家庭でも楽しめるBD、DVDなどで、劇場に来る人が減って関係者を悩ませていたということが言われている。一部の必ずヒットするだろう宮崎作品などを除いては、その影響は顕著だったのではないだろうか。
今回のことで映画も面白ければ客は入る、映画界は常に面白い映画を作りさえすればいい、ということが言えなくもないが、本当にそれだけの理由なのだろうか、とも思う。

もはや衰退産業ともいえる音楽CDの市場なのだが、衰退したのはCDを販売して利益を得るといった産業であり、音楽はまったく衰退していない。
メディアは売れなくなってきたけれど、今現在は音楽系のフェスがいろんな時期にいろんな会場で開催されており、音楽的には昔より盛り上がっていると思う。そして観客もどの会場もたくさん入っているところがミソだ。人々は音楽をCDで体験するよりも会場でライブで体験しようと行動を起こし始めているのだ。
もしかして、映画界にもこのような波が来ているのではないかと思う。

映画館で映画を見ると独特な空気感がある。それが映画におけるライブなのだと思う。
このライブ感覚は意外と悪くない。いろんな人と一つの物語を体験するという独特の空気感はなかなかに癖になるものだ。
もしかしたら、映画をその本来の場所である映画館で体験するというのは、音楽のライブに行き生でその音を体験するということと同じことだとなのではないだろうか。

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パソコンとかネットはすべて疑似体験のようなもので出来上がっているとも言える。そのようなものに取り囲まれて生活をしているのが現代人だ。
人々は今、本当の「体験」を求めて動き出し始めたのかもしれない。

でも、一番大切なのは「面白い映画を作ること」ということに変わりはない。
そうしないと、この波はすぐに泡となって消えていくかもしれない。