フィギュアスケート

引退会見の最後のことだった。記者の質問に一通り答えた彼女は、自分の言葉で会見を締めくくろうとしていた。
あと少しのところで、言葉に詰まった彼女は、さっと振り返り、指で涙をぬぐい、また正面に向きなおして、最後の言葉をみんなに伝えるのだった。
この一連の動作を見ただけでも、浅田真央という人がどんな人かどうかわかるというものだ。

このような会見で、涙を流した姿を、しかもダラダラと涙を流しながら何かをしゃべっているっていうのはやはりパフォーマンスで、テレビ映りを気にしているようなものだと思う。普通ならハンカチで涙をぬぐうだろう。

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涙が出るというのは、やはり少しは未練があるのだろう。
しかし、会見に臨んだ彼女は晴れやかな、憑き物が取れたような顔をしていた。
もう決断して心ができあがっているのだろう。戦いの中にはいない、アスリートというストイックな競技の中に身を置いている人間ではなかったように思う。
ふっくらとした顔からも何かそういうものを感じた。

フィギュアスケートの適齢期って

フィギュアスケートというのは10代の後半から20歳ちょっとくらいがメインの年齢である。ちょうど大人の女性の体になるのを前にみんな引退していく。
女性らしい体になると、バランスが変わるのかもしれないがジャンプが難しくなるのだろう。

しかし、違った魅力が出てくる。しなやかな女性の曲線というか美しさを表現するような、そんなスケートをすればいいのにと思っていた。とくに浅田さんはバレエをやっていたからかもしれないが、体の線の美しさが他の選手に比べて素晴らしいと感じる。

これからはプロに転向してアイスショーなどに出演していくのかどうかはわからないが、是非見に行きたいとも思う。そのようなスケーティングをぜひ見てみたい。

スポーツ選手の引退の仕方

スポーツ選手が引退するときに、チャンピオンの状態で辞めるとか、いい状態の時に辞めるというのが美徳というか良しとされているような風潮があるが、私はそれはちょっと間違っていると思う。人それぞれであるのはわかるが、負けるのが怖くなるのかもしれないが、負ける姿を大衆の目にさらすのを良しとしないのは少し弱い。チャンピオンは次の世代にちゃんとバトンタッチをして消えていくのが正解なんじゃないだろうか。

若乃花に負けて引退を決意した千代の富士は立派だったと思うし、ちゃんと王位を継承したことで相撲界も盛り上がったと思う。

スポーツを好きな人でそれで生計を立てている人なら、体が動くならそのスポーツをできるだけやっていたいというのが当然だろう。それは年齢を重ねるごとにそういう想いが強くなってくるのではないか。そういう人が現役生活を終えるとその業界にはあまりかかわらないような傾向がある。

競馬の岡部騎手は武豊が全盛期になる前の世代の偉大な騎手だったが、余力を残さず現役にこだわり、その騎手生活を終えた結果、競馬サークルではあまり活躍の場を作らず、テレビの解説にたまに出ているだけである。
サッカーのカズ選手も、今現在選手にこだわり現役生活を送っているが、たぶんサッカー界にはあまりかかわらないんじゃないかと思う。多分監督にはならないだろう。

相撲の話が少し出たけど、相撲は横綱まで昇進したらあとはやめるしかない。これがもったいないというかつらいところだ。ちょっとダメになってきても相撲が好きで勝負の世界に身を置きたくてもやめなければならない。普通に降級制度があれば面白いと思う。
そういえばこのよなことをビートたけしさんが言っていたと思う。昔横綱だったけど、今は幕下の力士になってしまった相撲取りがいてもいい。好きなことを突き詰めていく生き方はカッコいいと思うし、負けが込んできてもそれはみじめなことではない。
こういう力士がいることで大相撲のファンが増えるかもしれないと思うがどうだろうか。

生活の為には仕方ないのかもしれないが、選手生活を早々に切り上げてテレビタレントに転身する人もいる。別に悪くはないとは思うが、そういう人ばかりでは夢がないのだ。自分が好きなことをやり続ける環境を作り、自分を律してそれをできる限りやっていくという生き方、そんな生き方が称賛される世の中であってほしいと思う。
ミュージシャンの中には、武道館を一杯にしたこともあるのにいまでは小さなライブハウスで演奏しているような人たちが結構いる。

浅田真央さんの引退の場合

そんなわけで、今回の会見で彼女が、フィギュアスケートをするモチベーションが無くなった目標がなくなった、みたいなことを言ったのがすごく悲しいことだと思ったわけなのだけれど、彼女としてはもうすべてやりきったからそういう答えが出たのだろう。だから生まれ変わってもスケートをすることはないと。スケートをする人生での結果は出たのだと。これ以上の努力はないというところまでやってこの結果だから仕方ないということなのだろう。
たぶん、ソチのあの世界最高峰の演技ができたところから、もうモチベーションは少しづつ失われていっていたのかもしれないなと。

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白い衣装がよく似合う、清楚できれいな目をしている彼女をいろんな業界が放っておくことはないのだろうけど、やっぱり彼女には氷上で舞っていてほしいと思う。そういう機会を周りの人は作ってほしいし、彼女もそこにモチベーションを見出してほしい。
彼女の人脈なら面白いアイスショーができるのではないか?

今回の引退会見では、日本のマスコミがどのようなものかも露呈してしまったようだ。
質問の質って意外と大事だよね~。