矩になる

普通の賃貸物件を一時的に事務所として使うというので傷がついたり汚れたりしないように養生して使うのですが、そういう仕事もお手伝いとしてやっています。そういう場合は床はタイルカーペットと言われるホームセンターにも売っている300角の塩化ビニールに絨毯の短い毛が付いたカーペットを床に貼るのですが、これを貼るのは簡単なように思えて実は難しく、少しの歪みがだんだんと大きくなっていってずれてくるので、最初から慎重に貼っていかないといけません。でも使い勝手がよく、施工しやすく、使いまわしも効くので良い素材だと思います。

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そのタイルカーペットを床に貼るのを、ある建設会社のちょっと偉い方と一緒にやっているときでした。彼は慣れているのかバタバタと手際よく貼っていきます。職人?と聞きたくなるほどです。この業界、器用な人が多いです。私は隣の部屋で貼っていたところ、とある声が聞こえました。

「なんだこれ、かねになってねーじゃねーかよ」

というんですね。「かねになっていない」というのは一般の人が聞くと「お金にならない」というふうに聞こえると思います。要するに何の得にもなっていないということを言っているのかというとこの場合はそうではありません。私がお金にならない、つまり仕事ができない人という訳でもありません(たぶん)
「金にならない」とは「矩にならない」と書いて直角でないということをいいます。指矩(さしがね)という大工さんの道具があります。L型の定規のことです。直角な部分がある定規で直角な線を引くときに重宝します。

マンションの部屋や、アパートの部屋の角は直角なように見えて直角でない場合も多く、そのお方はそのことについて腹を立てていたようで、そのような発言をしたようです。直角になっているからよくてなっていないから悪いということではありません。タイルカーペットの角は90度で直角なのでそこがキッチリと収まらないから面倒だとその御仁はおっしゃっていたのでしょう。

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午後から二人で掃除機がけと壁の養生を含めて夕方までかかって終わりましたが、意外と時間がかかったと思ってらっしゃったので良かったと思いました。なんだか簡単に終わるように思われていたようでしたので。
この辺の時間のかかり方の見積もりができてプロだと思います。ほかの人が見積もった仕事に行くと「これは無理だ」と思うことが多々あります。

私の見積もりのほうがいくらかマシですね(笑)