昔、親交のあった絵描きのおじさんがよく言っていたことがある。
「日本のアイドル文化というのは、大人が子供を使って商売するような感じに映って嫌いなんだ。」
というようなことなのだが、なるほどなと自分も思っていた。
とくに、何も訓練されてない(ように見える)アイドルが市場へポンと投げ出され、市場で吟味され、需要がないと判断されるとポイっと捨てられてしまう、このようなものを繰り返し見ていたら、やっぱりアイドルでお金を稼ぐことについてあまりよくは思わないだろう。
ただ、訓練の結果でもあるが、とあるアイドルに才能の芽を見つけた時や、恐るべき才能を持っている少年少女を見つけた時には、大人はどうにかして世に出そうと思うかもしれない。それは、お金がどうのこうのではなく、この才能を眠らせるにはもったいないというような、それはその職業における使命感みたいなものではないのだろうか?
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BABYMETALを最初に見た時
私が最初にBABYMETALのことをネットの動画で見た時には、あまりいい感じはしなかったことを思い出す。
大人が、こういうのが面白いんじゃないだろうかということを考えだし、子供に実行させる。ヘビーメタルの世界観なんて、少女にはわからなかっただろうし、ただドクロマークとか十字架とかそういうことしかわからなかったんじゃないだろうか。
フリフリのかわいい衣装を着て歌い踊る、というような夢を見てアイドルの道を歩もうとしていたのかもしれない。でも本当は、毎日の目先の課題を一生懸命にこなしていただけなのかもしれない。重音部もその課題の一つに思ったのかもしれない。彼女たちははっきり言ってアイドルのエリートなので、一生懸命課題をこなそうとする。そして、一つのエンターテイメントを作り上げてしまう。
彼女たちは、そのようなコンセプトの音楽をやるには少し若すぎたように私には思えたので、そのけなげに課題をこなす姿がなんだか痛々しく思えたし、あまりちゃんとは見ていなかったのだ。
武藤彩未は80年代のアイドルというようなコンセプトだったのかはわからないが、80年代のアイドルに付けられていたキャッチコピーをパロディーにしていたのを見たことがある。
あれは、そのブレーンの人たちが80年代アイドルに多感な時期を過ごした世代なのかもしれないし、その世代の人たちに聴いてもらいたいからかもしれないが、それほど効果的だったのかどうかはわからない。もっと彼女にオリジナルのキャッチを付けてやったほうが良かったのかもしれない。
悪い見方をすれば大人の悪ふざけに映ってしまうからだ。
彼女は今、活動を休止しているようだが、活動を再開すればBABYMETAL効果でさくら学院とともにいい影響があると思う。
BABYMETALも少しだがパロディーの要素はある。「X」の影響だったり、大御所メタルバンドのイラストだったり、オマージュと言えるようなものはたくさん見つけられるが、これらは成功すれば面白く映るし、失敗すればとてもつまらないものに思えてしまう。
拝借するほうの楽曲やバンドのクオリティーも重要であるが。
アイドル本人としてはどうなんだろう?
正統派アイドルとして普通のことをして売れなくても正面から世間と4シームのストレート勝負して、ダメならダメでそれなら諦めがつくのだろうか?大人が教えてくれた変化球勝負でもコテンパンに打ち込まれ、マウンドを降りるときに、どうせ負けるなら自分の持っている渾身のストレート勝負をしたかったと後悔することもあるのだろうか?
ただ、ストレート勝負ということになると、今は情報過多の世界で、マウンドにさえ上がれないという状況があるかもしれない。
全く注目されずに終わってしまうこともあるだろう。
だから、大人としては苦肉の策なのかもしれない。
アミューズの先輩のPerfumeでさえ、テクノポップに移行するにあたり、アクターズスクールで教えられた、歌を歌う時には感情をこめて歌う、ということを一度捨てなければならなかったと言ってたのをインタビュー記事で読んだことがある。レコーディング時の話なのだが、もっと突き放すように無機質に歌うようにと。彼女たちは混乱し、家に帰って涙したと。
これは、大人たちの「苦肉の策」がうまくいった例だが、失敗した例もたくさんあると思う。
BABYMETALを最初に見た時に、ヘビーなJpopをアイドルの形で見せるという感じかなと思ったが間違いじゃないだろう。
だいたいこのように初めて聞いたり見たりしたバンドについて、自分なりに分類して終わり、みたいなものが多い。これはいけない傾向だと思う。その先になかなか踏み込んでいくことがないのだ。上っ面だけながめて終わりなのだ。
この当時は、今もだが、私はPerfumeのファンで結局方法としてはPerfumeもBABYMETALも同じだなと思っていた。
アイドルが音楽的にもカッコいい音楽を歌い踊るという。ただ、Perfumeのテクノ・EDMはダンスと結びつきは深いが、BABYMETALのHEAV YMETALとダンスは結びつきはあまりないので、BABYMETALのほうがより独自性が高いように思う。
ギミチョコ新規
私はギミチョコ新規だと思う。
あのPVでやられてしまった部類だ。
あのPVを見たのはちょうどBABYMETALが武道館ライブを成功させた時だっと思う。ネットニュースで盛んに取り上げられていた。
何かが起こっている、そう感じてyoutubeのチャンネルに行って見たのがギミチョコのPVだったのだ。
スーパーキャッチ-なサウンド、パンキッシュな感じもあって血が騒いだ感じだ。それにあのかわいいダンス。MIKIKO先生が一枚かんでいると知って納得した。
Perfumeでいえばこれはチョコレイトディスコのような曲になるのではないだろうかと思った。
その時に書いた文章がこれだ。
Perfumeのヘビーメタル版はBABYMETALだと言えるのだろうか?
このときになぜ、すんなりとBABYMETALのことが心に入ってきたのだろうと自分でも不思議に思う。
大人が子供を使って・・・みたいなことは全く感じなかったのだ。
まず、彼女たちが普通に成長していて、日本の見慣れた「アイドル」という年齢に達していたということもある。
ダンスの良さと楽曲の夢中になるような悪魔的な良さもある。
それに、前回見た時にはいなかったバックの凄腕のミュージシャンがいたからかもしれない。これに何かの本気度を感じずにはいられない。
前回みたときには骨模様の全身タイツを着た奴らがエアプレイをしていただけで、ほんとにパロディ色が強かったし単なる企画ものの臭いさえした。
もっと他にもあるだろう。
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自信から確信へ
私が一番大きいことだと思ったことは、心の変化だろう。
よく言う自信が確信へと変わった瞬間があったと思う。
NHKの特番だったと思うんだけど元メガデスのマーティ・フリードマンのBABYMETALへのインタビューで、ボーカルのスーちゃんが以下のようなことを言っている。
メタリカさんのライブを見た時に、
音楽って耳で聞くものじゃないんだなっていうことにまず気付かされたんですよ。
本当に心にズンってくるような感じっていうか、そのときに、BABYMETALのライブをしていてもときどき思うんですけど、本当に心から動かされる感じで、気が付いたら体が動いてる、もう頭で考えるんじゃなくてとりあえず動け、みたいな、なんかそれくらい強いメッセージ性を持っている音楽だなというふうに感じていて、元気になれたりとかパワーをもらえたりとか、やっぱり強い音楽激しい音楽ってそれなりの意味を持ってそういうふうに存在しているだなって感じてますね。
これだろう。
よく理解していると思うし、「強い音楽激しい音楽はそれなりの意味を持って存在している」というこの言葉選びのセンスも素晴らしい。
私などは、激しくてめちゃめちゃにしてくれるものなら何でもいい、みたいなこと思ってたように思う。恥ずかしい限りだ。
たくさんの人に会い、日本だけにとどまらず世界に出て行って、いろんな音楽を聴いて、そのような答えが自分の中に生まれてきて、それが見ている人にも伝わるようになってきたのだろうか。
結局、まじめに音楽に取り組んで、課題をこなしていったところ、ひとつの答えにたどり着いたということなのだろうか。
まじめに謙虚にやり続けるということは尊いことなのだ。