とあるおじいさんの話

最近ちょっと思い出したことがあるので書いてみます。
小学校の頃の話なんですどね。

通学路に廃品回収屋があってテレビや洗濯機などの電化製品や自転車、古タイヤなんかが山積みされてるとこがあったんです。

そういうのって子供にとっては宝の山で、当時はモーターやテレビのブラウン管の根元についた磁石をとったり、真空管を集めて

「爆弾だ!」

といって投げつけて割ったりして(そんな感じの音がする)遊んだりしてました。
洗濯機のタイマー回して「時限爆弾だ!逃げろ!」とかですね(笑)

その日もいつものように廃品を物色してたんです。
友達と3人で我先にとあさりまくってた時でした。

「こらっ!!なんしようとかーっ!」

「いつものよう」じゃなかったのはそこのオヤジに見つかってしまったことでした。
友達二人はものすごい速さで逃げていってしまいました。

おれはというと取り残されたというか、あたり一面散らかったガラクタをみて「悪いことしたな」と思い、(当時は本当にそう思ったんです。信じてほしい。)その場を片付け始めたんです。

オヤジはそばで何かブツブツ言いながら見てました。
そして、「これに住所と名前を書け!」と言われ緑色の封筒のような紙切れを渡されました。

おれは「これで親や学校に言われて怒られるなー」と思いながらも正直に書きました。片付けてるときからもうずっと半泣きでしたよ(笑)

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それからかなりの年月が経ちました。
おれは19歳になってました。

高校卒業して受験に失敗して、浪人してまた失敗して、もう親に金銭的に負担をかけられないと思い宅浪してました。

夜遅くまで起きていて勉強してるのかしてないのかわからないような状態で、昼近くに起きて「いいとも」を見るといった生活してました。

その日もいつものようにいいともを見てたところ外で何か呼んでるような声がしてることに気づきました。
何だろう?と思いドアを開けてみるとそこには杖をついた見知らぬおじいさんが立っていました。

そのおじいさんはおれを見るなり「ああっ、、」
と納得したように、見つけたように(うまく表現できない)少しのけぞるような感じを一瞬みせて、そのあとちょっとうつむき加減になり歩き出しました。

その顔は笑顔でした。

おれはなにがなんだかわかりませんでした。
そのおじいさんはおれの方を振り返ることもなく、なにもしゃべることもなくトボトボとどこかへ行ってしまいました。

おっかしいな~?
おれは訳がわからないまま扉を閉め部屋に戻りました。

あっ!

そのとき突然わかりました。理解できました。
そう、そのおじいさんはあの廃品回収屋のオヤジだったんです。

どういう思いだったのかわかりませんがあの紙切れをずっと持っていたんだなーとか、おれのこと気にしてたのかなーとか、

いろいろ思いました。

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今考えるとほんのちょっとの縁だったのにすごい暖かい気持ちにさせられたと思います。あのおじいさんの姿は今でも鮮明に思い出されます。

ちょっとうつむき加減のてれくさそうな笑顔も。

もうさすがになくなってると思いますのでご冥福をお祈りいたします。

いい思い出をありがとうございました。